私は死が怖くないという人があります。
それは、まだ死ぬと思っていないからです。
『横からみた赤穂浪士』という本があります。
この本には、大石蔵之助が切腹できずにいる姿が描かれています。
浅野内匠頭の刃傷事件が起きて、
お家取り潰しになった時、みんな切腹しようと言い出しました。
その会議の議長をしていた大石は
「吉良はまだ生きている」
の名言とともに、その切腹を止めたんですね。
「切腹ならいつでもできる!」
といっていました。
その大石が、死ねないんですね。
ところが、大石内蔵助が死ぬのが怖いとなると、
臆病で切腹できなかったといわれて
名誉に傷がつきます。
それを見兼ねて介錯人が首はねました。
介錯人というのは、武士の情けなんです。
普通、刀を刺したら転げまわるんです。
画鋲踏んだだけでも叫びますよね。
だから刺すと同時に後ろから切ります。
腹を刺すという痛みもですが、
実際死に直面すると、死の恐怖に耐えられないのです。