仏教研究室

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カスパロフとディープブルーと生きる目的

アメリカのコンピュータ会社のIBMというところで、
ディープブルーという、スーパーコンピュータを作りました。
これは沢山のコンピュータを一つにまとめた
ものすごく素晴らしいコンピュータで、
一秒間に、十億回の演算ができるという。
十億回の計算ができるのです。

でこのディープブルーは何をやるコンピュータかというと、
チェスの試合をします。
そして人間のチェスの世界チャンピオン・カスパロフという人と、
勝負をしました。

このカスパロフって言う人は、
今は政治家ですが、
十代で世界チャンピオンになって、
15年以上君臨しました。

3年間負けなし。
史上最強の世界チャンピオンと言われた人なのてす。

そのカスパロフは、ほとんど人間相手には負けたことがありません。
チェスの世界では最も強い人です。

そのカスパロフにこのディープブルーというスーパーコンピュータが挑戦した。
このディープブルーにはチェスの定石を全部インプットしてあります。
そして過去のチェスの名人達のその試合の一手一手が全てこの中に入っています。
それを元にしてディープブルーはどの手を差したら一番勝つ確率が高いか。
例えば今の局面で5通り指し方があるとします。

でそれに対して相手が返して来る手はこれだけあるとします。
それに対して打つ手がまたこれだけあります。
それら全部計算して、勝率を計算して
これが一番勝率が高いとなるとそこから逆算して今この手を決めます。

ABCDEと五通りあるとすればこのBの指し手が一番勝率が高いと。
それを一秒間に十億回計算するわけだから、
ダーッと計算してアッという間に次の一手を指します。
そういうスーパーコンピュータです。

まあカスパロフとしたら歴代の世界チャンピオン
すべてを相手にして、しかも一手の間違いもなくさされます。
そういう相手なんです。
そこでカスパロフは考えた。
『そうか、こいつは定石を全部知って
過去の世界チャンピオンの記録を全部覚えている奴か』と。
カスパロフは、
『俺はその定石を全部無視して戦おう』
全ての定石にない、
全くそれに反するような手を打っていった。
そこで流石のディープブルーもカスパロフ
あまりにも意外な手を打つものだから、
例えば普通将棋なら、七六歩とか二六歩とか、
角の道か飛車の先を上げるのが常道なんだけど。
いきなりこの、ね、五五王とか。
そんな手はないけど。
カスパロフはとんでもない手を指すわけです。

するとディープブルーは混乱しちゃって、
計算ができなくなっちゃって、計算してるんだけども、
こいつが悉く外れてしまいます。

それで一回戦はカスパロフが勝ちました。
ディープブルーが負けました。

その時カスパロフはマスコミの前で意気揚々としてね、
インタビューに応じて、
『まだまだ機械如きには人間は負けませんよ』
と豪語しました。

ところが第二戦。
今度はディープブルーが過去の定石と名人たちの記録と、
カスパロフの第一線の記録を
全部インプットされて、そして考えました。
ディープブルー自ら考えたんです。
今度はカスパロフがこういう手で来ても勝てると考えたのです。
第二戦。
カスパロフはまたその定石を無視したやり方でいったんだけれども、
ディープブルーはもうそれには惑わされない。
着実に勝つ一手一手を進めていって、第二戦はカスパロフ惨敗です。
そして決勝の第三本目、決勝のゴングがいよいよ鳴りました。
カーン。
青コーナーカスパロフ
赤コーナーディープ、ブルーじゃないか。
こちら青コーナー、赤コーナーカスパロフということで、
決勝の三本目。
ところがカスパロフ、第二戦で負けたのが大変ショックで、
彼は本当は人間の心理をついて、
相手の弱点をついて、
攻め勝つのが得意なチェスの名人だったんだけど、
こちらは心理もへったくれもありません。
何を指しても汗一つかきません。
こちらが余裕たっぷりの表情をしても
全然もう暑いとも寒いとも言いません。

そういう人ですから、心理も読めません。
逆にカスパロフの方が動揺してコンピュータの前に人間が負けました。
これ世界中に報道されてね、あれだけの世界チャンピオンが、機械に敗れました。

一体考えると言うことはどう言うことなんだろう。
あれだけ高度な知的ゲームと言われるチェスでさえ、
人間はやはり機械に勝てません。

としたら、この先人間のやることは
みんな機械がやってしまうんじゃないでしょうか。
という予想まで出たわけです。

そのうちに作曲もあるいは文学も全ては機械ができるようになるんじゃないか。
たとえば過去の作家のね、情報全部入れて、
夏目漱石芥川龍之介太宰治
それらを全部総合して名文を書くような機械が現れるかも知れません。

ベートーベンやバッハやモーツァルトの曲を全部入れて、
それら全てを上回るような感動的な名曲が
機械によって生みだされるかも知れません。

ゴッホとかゴーギャンとかね、ピカソとか、
ああいう訳のわからんこう、
カメレオンみたいな、
アビニョンの女達というような
目の飛び出したようなああいう美女。

そういうびじょびじょの絵を作る機械が現れるかも知れない。
としたら一体人間のやることは何なでしょうか。
芸術の世界でさえ、やがて機械がとって変わるかも知れません。

じゃあ人間の人間たるところは一体何が残るんでしょうか。
こういう疑問が今、この人工知能の世界で問題にされているんですね。
パスカルの時代は人間は考える葦だと言ったけれど、
今は機械の方がよっぽど考えます。

正確に、早く、大量に。
じゃあ人間が考える事って一体なんだろう。
それこそが人間の人間たる所以じゃないですか。
機械にはできない、人間にしかできない事って一体なんだろう。
それこそが生きる目的じゃないでしょうか。

それこそが人間にとって本当にやらなくちゃならないことじゃないでしょうか。
やがてそれが問題にされます。
その生きる目的を私たちは学んでおきましょう。
まさにこれは未来を先取りする素晴らしい勉強になります。