白骨の章には
「されば、人間のはかなき事は老少不定のさかいなれば」
とあります。
「老少不定」は、年とっている人が先に死に、
若い人が後に死ぬということは決まっていないということです。
これを
「無常は同い年」
といいます。
人間界とはそういう境涯です。
次に
「誰の人も、はやく後生の一大事を心にかけて」
とあります。
「誰の人も」
というのは、すべての人です。
後生に関係のない人はいません。
それで誰の人もと言われています。
「はやく後生の一大事を心にかけて」
とありますが、なぜだんだんではないのでしょうか。
老後は突然ではありません。だんだんです。
昨日まで若かったのに、
今日から老後になったということはありません。
ところが後生は突然やってきます。
後生はいつ来るか分からないので、
「早く」といわれているのです。
死んで行くときには、今まで手に入れたすべては夢のように消えて行きます。
邯鄲の夢が本当になります。
今まで手に入れたすべてをおいて
ひとりぼっちで死んで行かなければなりません。
死ぬ以上の一大事はありませんので、
これを後生の一大事といいます。